第99章 夏の大三角(8)肝試し編
その頃、三成は……
「や、やっと捕まえました…はぁ…はっ……ひまり先輩」
サラリと髪が靡く。
揺れる吊り橋を何なく渡りきった所で、
やっと追いつき……
「いやぁぁあ!キャァァァア!」
とてつもない悲鳴が山に響いた瞬間。
へ!?
今、腕を掴んでいるのがひまりでない事に気づき……三成はへの字口をして間抜けな声を出す。
「誰と間違えてるのかしら?」
副部長は笑いに耐えながら髪を手で払い、妖艶な笑みを浮かべる。
(……やられましたね)
家康の策に引っかかった事を知り、一気に脱力感に襲われた三成が、その場に崩れ落ちた時。
「ひまり、大丈夫かな?」
「アレは織田先生の鬼の手に、やられたな」
「家康の野郎。いい所どりしやがって」
「……橋を切ってやりたい所だか。それだと他の者やひまりが困るからな」
弓乃と秀吉は再び姿を現し、心配そうに山奥を見つめる。そこに釣竿を持った政宗、狐の面を頭に乗せた光秀も合流した。
「副部長。貴方、家康先輩に好意を寄せていたのでは?」
むしろ、二人がペアを組んだことで何かしら発展し、自分の立場の方が優位なると踏んでいた三成。
腑に落ちない様子で尋ねた。
「疎そうに見えて、石田くん案外鋭いのね」
生憎……
もう、とっくに吹っ切れてるわよ。
強がりか本音か。
それは副部長のみ知る。
ひまり達が暫くすれば現れるだろう。
六人はそう予想し、
夜空に向かって飛び立つ、
鳥の大群を見る。
「そう言えば、他の部員は?」
副部長の言葉に、
首を傾げなかったのは……
光秀のみだった。