第98章 夏の大三角(7)肝試し編
命の灯火のようだった
懐中電灯を失い……
(な、なんか空気が冷たい気が……)
ヒンヤリとした重い空気をひまりは感じ取りながら、足を踏み入れる。
三成の服の裾。
まるでそれが命綱の様に、
震える手でしっかりと摘む。
リタイア続出ゾーン。
恐怖の明智光秀現場に差し掛かった、墓地の入り口……。
広い敷地に風化した墓……
暮石は原形を取り止めず散乱したようにいくつか崩れ、地面に横たわっていた。花なども一切備えられた形跡はなく、掃除や手入れどころか墓参りに誰かが訪れた様子など全くない。
懐中電灯の明かりがなくとも、暗闇に慣れた瞳にその光景が映り……
(だ、だめ。わ、私の一番苦手な雰囲気だよ……ここ……)
ひまりの恐怖のボルテージは、マックスに上がる。
「先輩。良ければ服ではなく、私の手か腕に……」
「でも、くっ付いたり手を繋いだりしてると何かあった時に、三成くんが動きづらいから」
さっきの吊り橋で教訓を得た、ひまり。後ろに居た三成を残し、先に自分だけが咄嗟に逃げてしまった事を詫びた。
密着していると違う意味でも、ドキドキしてしまい反応が鈍ってしまう。
その事も頭の隅に置き、ほど良い距離を保ちながら、安心感もそれなりにあるこれが、一番良いのだと判断。
ボッボッ……
ブワッ。
「な、何!!」
原形がまだある暮石が立ち並ぶ奥へと、進もうとした時だ。
「まさか……人魂!」
空中を浮遊する青い光が、
一つ、二つと……
数えている間に増え……
「クッ、クッ………」
「いやぁぁあああああ!!」
ひまりは、頭を抱えながら座り込んだ。