第98章 夏の大三角(7)肝試し編
でも、
それより三成くんの動きのが速くて……
(だ、だめっ!!)
咄嗟の抵抗で、顎を引いた瞬間。
ぐわぁん。
急に引き離すように浮遊感が起こり、橋の入り口からずっと密着していた身体が、パッと離れ……
ぐわんっぐわんっ!!
橋がさっきまでとは比べれないぐらい、大きくまるでブランコに乗ったみたいにぶらーんっ。ぶらーんっ。上下ではなく左右に揺れ出す。
「きやぁぁぁぁーーっ!」
「さ、流石に気分が……っ」
いつの間にか橋の終わりまで後、少しの所まで来ていた。私はもう無我夢中で真っしぐらに出口向かい、やっと固い感触の地に足が着き……
とてつもない安心感が降りて……
その場に倒れこんだ。
「どうだった?吊り橋効果は?」
声主が誰かわかった私はガバっと顔を上げると、
「お前なのわかって、控えめに揺らしたんだけどな」
頭の上に置かれた優しい手。
ゆっちゃん!秀吉先輩!
懐中電灯を持っていなくて、ほぼ声だけを頼りに名前を呼び、
「最後のは本当に怖かったよぉーー!」
「よしよし!……って最後?」
ゆっちゃんはその言葉に首を大きく傾ける。何でも、私達が出口に近づくのを確認して先輩と奥に隠れたらしく、それからは一度も揺らした覚えはないと話す。
え??なら、誰が??
その疑問が浮かんだ時。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
まだ、橋に残っていた三成くんの悲鳴に近い絶叫が辺り一面に響いた。
自然現象??
それとも向こう側に居る誰かが?
「帰りは揺らさないでやる。頑張って木札取ってこい」
秀吉先輩の爽やかな笑顔が、降り注ぐ中。
サァッー……。
みるみる私の顔が青く染まる。
その言葉に、
一気に血の気が引くのを感じた。