第98章 夏の大三角(7)肝試し編
『吊り橋効果』
極限の状況で緊張感が高まり、恋に落ちやすい。確かそんな事を、以前ゆっちゃんが言っていた気がする。
ミシッミシッ……
足を踏み込むたびに、
板が軋み、辺りに響く。
一歩間違えば、河に落ちるかもしれない恐怖と戦いながら……
心臓が
ドキドキドキドキ……
ぼろぼろの橋が揺れる度。
鼓動が速くなる。
そして、
「凄くドキドキしてますね」
後ろから胸元を包むように伸びてきた手。私の心臓の鼓動を手で感じるように、触れた。
(三成くん!胸!///胸!///)
頭ではそう叫び、
「もう、やだぁぁぁーーっ!!」
口から出たのは悲鳴混じりの言葉。
私の中でドキドキは明らかに恐怖心のが強い。早く早く早く!
「先輩。可愛い。こんなに鼓動を乱れるぐらい、私に……。今なら橋から落ちても、構いません」
何か確信に満ちた艶のある声が、耳を掠め擽ぐるように囁かれる。私の歩みはいつの間にか止まり……
「み、つなりくん……?」
僅かに揺れがおさまった時。
私は、首を動かして顔を上げた。
月明かりの下。
絡み合う視線。
「勘違いしても……宜しいでしょうか……」
三成くんの手が胸元からスルスルと、顎に向かってのぼってきて……
ドキドキドキドキ……
また、吊り橋効果が始まる。
星空を後ろからくっ付けながら、ゆっくりと降りてきた三成くんの顔。
そして、
キョトンとしたままの私と鼻先があたる直前に、スッと顔を傾かせ……
(ま、待って!も、もしかしてキスされる!?)
三成くん!も、もしかして吊り橋効果でおかしくなったのかも知れない!
ようやく状況をのみこみ、働いた思考。