第98章 夏の大三角(7)肝試し編
しかし……
「何の為に、髪を下ろしてあげたと思ってるのよ?あの子に似せてあげたんだから、感謝しなさい」
「……全然、似てない」
「あのね……まぁ、いいけど」
一方通行の会話にそろそろ嫌気がさした頃だった。
ヒュッ。
微かに感じた風。
家康は咄嗟に身を引き、
「……お前。少しは空気を読め」
釣竿を掴んだ。
そしてつまらなさそうに肩を竦め、茂みからヒョッコリ現れた政宗に詰め寄る。
「まさかひまりにしたとか。言わないでよ」
「腰抜かして怯えてたからな。慰めておいた」
(つまりさっき聴こえた、悲鳴の原因がコレってワケ)
家康は釣竿の先にぶら下がるコンニャクを見て、定番過ぎと毒吐く。
そして、今度は政宗が詰め寄る番に。
家康と三成の勝負に口出す気も、どっちかに肩を持つ気もサラサラ無い。しかし、勝手に自分を差し置いていた事を知り、腹を立てたのだ。
「お前らだけで、勝手なこと」
この先の吊り橋叩き切って、帰れなくしてやろうか?
その声は至って普通。しかし、顔は真剣さを帯びているが家康は全くそこには触れずスルー。
それよりも
「ちょ!何!この先に吊り橋なんて聞いてないし!」
吊り橋の言葉に焦りをみせた。
まさに、一番重大なのはそこ。
(三成の思う壺だし……っ!)
そして家康の心配は見事に的中し……
その頃……
「きゃぁ!揺れる!落ちるーーっ!」
ひまりとぴったりくっ付き、
「何があっても、貴方を離しません」
三成は幸せの絶頂に。
ドキドキハラハラ。
吊り橋で、
まさに恋の吊り橋効果が始まっていた。