第97章 夏の大三角(6)肝試し編
うまい具合に霧がかかり……
うす気味が悪い空気がまとわり付く。
「徳川君、ちゃんと守りなさいよ〜」
副部長は、手に持っていた懐中電灯で家康の肘をチョンと突く。
「……五分後」
その意味がわかっている家康は頷き、ボソッと呟く。そして、腕時計で時間を確認すると懐中電灯を受け取り……
三成の一歩後ろで両腕で自分の身体を抱きかかえ、震えながら足を踏み入れたひまりの背中を照らした。
その頃、仕掛け役の四人は……
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
「きゃーーっ!何これーっ!!!」
政宗は釣竿を片手に振り回し、
笑うのを必死に堪え……
「お、おおちるーっ!」
「ぬぉぉぉぉーっ!」
(愛の共同作業♡)
脅かし役をかって出た弓乃は、念願の秀吉と同じ場所に配属され、舞い上がる。
「も、もう勘弁してくれーっ!」
光秀は影の如く、実力を発揮。リタイア続出に細く笑みを暗闇に浮かべ……
「あ、あった!木札!」
「よっしゃ!これ……で……」
「うぉぉぉぉ……!!!」
最後の砦、信長。
木札はまだ、誰の手にも握られることなく時間だけが過ぎて行く。
そして、歩き出して数秒で
「きやあああああ!!」
ひまりの悲鳴が、
山奥に木霊した……。