第97章 夏の大三角(6)肝試し編
ヒュー……ドロドロ……
そんな音楽が
今にも響きそうな……
山奥の闇の中。
最終目的地は肝試しにありきたりな墓地。そこまで辿り着いた証拠に木札を、持ち帰る必要がある。
まさに、度胸試し。
しかしそこに着くまでに、数々の試練が待ち受けていた。
弓道部員はそれぞれスタート位置に立ち、時間差で山道に足を踏み入れ……
「俺が一番乗りしてやるぜ!」
ふざけて一人で向かう者。
「ちょっと!あんた先に行きなさいよ!」
「お、押すなって!」
「私達置いて逃げたら、許さなさないからね……っ!」
怯えて数人の男女で向かう者。
そして、
「ど、どうしてもい、行かなきゃだ、だめかなっ……」
「明日の追加トレーニング受けますか?」
(そ、それは……っ)
小さい頃から雷とこの手の部類が、大
の苦手なひまり。
何歳になってもコワイものはコワイ。大好きな遊園地に行っても、お化け屋敷だけには決して、足を運ばなかったのだ。
去年の合宿は、絶妙なタイミングで雨が降り出し肝試しは中止。
だから、両方が未経験だった。
ひまりは、頭と心の中で天秤にかける。
苦手な肝試しか体力、精神的に辛い練習。涙を浮かべ、ゴクリと息を呑み、膝をガクガクしながら考えた。しかし一人じゃないという理由で、僅差で肝試しが上回り……
ぎゅっと拳を握る。
「が、がんばる……っ!」
わがままは言えないと腹を括った。
(ひまり……)
そんな様子を後ろから見ていた、副部長とペアの家康。どうして、隣に居るのが自分じゃないのかと……昼間の後悔が蘇り、はぁっ。と大きく息を吐いた。
怖がりなひまりにくっ付くな。は、酷な話。しかし、間違いにも抱き着いてなど欲しくない。
家康の心は大きく揺れる、焦り出す。
吊り橋効果にはさせたくないと。