第97章 夏の大三角(6)肝試し編
(家康様視点)
見取り稽古なんて口実。
あの場からひまりを離したかっただけ。
稽古しながらも、耳はしっかり聞いてたし。小春川が余計な話するから、ますますひまりは怖がるし、これで肝試し完全に三成の思う壺。
(ほんと、最悪)
ひまりと目が合って、逸らしたのは焦ってみっともない顔してる俺なんか見せたくなかっただけ。
パンッ!と弾ける音を
何処か遠くのように聞きながら、
次々と周りの女子が矢を放つ中、俺はある一点だけ見つめる。
しなる弓とは違い、
ピンっと伸びた背筋。
凛とした横顔。
キュッと一文字に閉じた赤い唇。
ひまりのその鋭く澄んだ視線に、射抜かれたいとか普通に思う俺。
かなり重症かも。
「……ねぇ。矢を放つ時、何考えてんの?」
「え??特に何も意識してないつもりだけど、無心の方が弓と一体感になった気持ちになるから」
弓道の極意。
無心で極限と最後までしっかり神経を切り詰める。動作を一つ一つを滞りなく行う為に。それを、一番に教えたのは他の誰でもない俺自身。
だから、余計に
家康は何か考えてるの?
そう聞かれ、言葉を詰まらせる。