第97章 夏の大三角(6)肝試し編
「大丈夫ですか!?」
「三成くん……」
練習が終わったのか、三成くんはしゃがみ込み私の顔を心配そうに覗き込んだ。ゆっちゃんは肝試し前にちょっと盛り上げようと思って、とぺろっと舌を出す。
「ごめん、ごめん!つい、反応が面白くってさ!」
「うぅっ……迫力あり過ぎだよ……」
「小春川先輩。あまり、ひまりを怖がらせないであげて下さい」
三成くんはそう言いながら、あやす様に私の頭を撫でてくれる。
本当に優しい。
けど、
(これでますます肝試し行くの、怖くなったよ……)
はぁっ。
膝を丸め肩を落とす。
すると、どこからか視線を感じ顔を上げると家康がジッと私の方を見ていて……
目が合った瞬間。
フイッと視線を逸らされた。
何故かちくりと痛んだ胸。
「何だ、お前もしかして怖がりか?」
「もしかしてじゃなくて、本気で怖いの!」
茶化す様に現れた政宗に、私は頬を膨らませると次、女子の番と呼びにきてくれた秀吉先輩が、
「涙なんか浮かべて男見ると、色々勘違いされる。だから、気をつけろよ?」
「勘違い?」
「守ってやりたくて、堪らなくなるからな」
私の目に浮かびかけた涙を、指先でピンと弾く。
「安心して下さい。私が必ずお守りしますから」
「み、三成くん///ま、まだ肝試し始まってないからね?///」
「これでもかと言うぐらい、密着して頂いて構いませんので」
急に手を握りしめられ、私は慌てて手を引っ込め立ち上がる。
すると、再び家康と目が合って……
何だろう。
さっきから。
また、逸らされる。
そんな気がして、それが嫌で無意識に伏し目がちに視線を床に落とすと、
「ひまり。見取り稽古つけてあげるから、おいで」
視界に移った白い足袋。
私は顔を上げ、
「え?いいの?休憩時間なくなっちゃうよ?」
そう尋ねる。
嬉しい。でも、そんな事したら休憩時間があっという間に終わってしまう。
けど、家康は気にしなくていいと言って……
「……さっき、顔冷やしてくれたお礼」
何故か三成くんを見ながらそう言うと、私の腕を掴み射場まで引っ張った。