第97章 夏の大三角(6)肝試し編
隣接された道場に移動した私達は、射場の隅で型の練習を始めた。
先に本格的な練習をしている男子を横目に、背を向け弓を持つインスピレーションを行い、呼吸の間、放つ時の動作をイメージをする。
「よーし!皆んなオッケーね!暫く休憩して、男子と交代するよ!」
「「「はい!!」」」
私達は元気よく副部長に返事をし、話題は自然と今夜の肝試しに移る。
「何かこの辺り出そうだよね〜」
「私、実は家でちょっと調べて来たんだぁ〜……怖い話」
「ゆっちゃん!や、やめてよーっ!昼間でも怖いからっ」
ふっふっふ。
必死にお願いする私を他所に、ゆっちゃんは不気味な笑みをうかべて……
「今夜の肝試しのルートにある、古い墓場でね……」
まつわる怖い話を語り出した。
昔から伝わる話。
滅多に誰も近寄らない山奥に、建てられた古い墓地。夜に近づくと、着物姿の女が現れるという、噂が広がっていた。
その女の風貌に見覚えがある村人の男は、噂を耳にし確かめようと先に一人で墓地を訪れ、後から近所のお坊さんに来て欲しいと頼む。
「そして……お坊さんが墓地に行くと、クチャリクチャリ……音が聞こえてきて……」
「ゆっちゃんそれ以上はもうやめてっ!……うぅっ……」
私が途中で耳を塞ぎ、涙を浮かべながら首を横に振った時だった。