第96章 夏の大三角(5)
手前のコースに立ったのは、
中性的で端正な顔立ち。
眩い黄金色の柔かなくせ毛。
きめ細かい肌。
翡翠色の瞳が特徴の徳川家康。
ツンな性格は承知の上。でも、またそこがギャップ萌えして堪らないと、
女子部員は、うっとりとした視線を向けた。
奥のコースには、
純粋派美少年。
細いサラサラの髪に寝癖。
美白保持者。
目元のホクロが特徴の石田三成。
セクシー系で、尚且つ癒し系を兼ね備えた究極青年。
優しい天然エンジェルに隠された闇は、まだ?嫌、今後も女子部員は知らない。
そんな二人に
もう、視線は釘付け。
(怖がりのひまりと、肝試し。密着度が絶対ヤバいはず!)
家康は胴着の袂を固定する為、腰紐を口に咥え、素早く背中に回し、固く結びつけ……
そのすぐ隣で、
(一緒にお化け役をかって出て、長時間過ごすのも良いですね)
三成も同様、長い袂を紐でくるりと腕を回しながらタスキ掛けし準備を整える。
「家康〜!三成くん〜!二人とも頑張って!!」
ひまりは、笑顔でガッツポーズを送る。そして、その声援にますます闘争に火がついた二人は、
「舐めないでよ。俺の脚力」
(絶対負けらんない!)
「私こそ、コツは心得ております」
(勝たせて頂きます!)
信長は片手を下に降ろし、
スタンバイの合図。
「無様な姿、晒すなよ?」
かかれ!
空に向け、高く手を挙げた。