第96章 夏の大三角(5)
「貴様、バス内を立ち歩くな。大人しく出来ぬなら、今すぐ俺の膝の上で可愛がってやる」
顧問である信長は、姫を膝の上に乗せようと腕を引っ張り、
「こっち来い。今すぐ内診してやる。お前の身体……隈なく、な」
この日に副顧問の存在を知った部員が、少なからずは居たはず。
信長の膝の上に乗った姫の身体を、隣に腰掛けていた光秀が弄るように手を動かした。
「ほら、俺が守ってやるからこっちに来いよ」
必死にそこから逃げる姫を、今度はお兄ちゃんがわりの秀吉が守り、
「ったく、少しは大人しくしてろ」
くしゃくしゃと愛でるように手の平で、姫の頭を撫でる政宗。
そして、
「先輩。私にもポッキー下さい。勿論……その桜色の唇と一緒に」
どこからともなく現れた三成は、いつの間にか姫にポッキーを咥えさせ、ポリポリと食べ始め……
それを横から凄い剣幕で止めに入ったのは、幼馴染の家康。
「ひまりと、ソレして良いのは俺だけだし」
「ちょ!///家康、顔近いよ!///」
「ほら、早く咥えな。残さず食べてあげるから」
自分の膝の上に乗せ、三センチもないようなポッキーを姫の口に咥えさせ、唇の端をペロリと舐める。
「なんで皆んな意地悪するの!///」
誰がどう見ても六人が姫に『好意』を寄せているのが、わかる中。
肝心の本人はソレを『意地悪』と説く。
さて、その心は……??
「「「はぁ………」」」
盛大なため息をも乗せたバス。
学園から出発して、一時間後。
山荘にある合宿所に辿り着き、生徒達は澄んだ空気を体内に大きく取り込みながら立派な建物を見上げた。
山荘……
嫌、まさに小城。