第96章 夏の大三角(5)
合宿当日の朝。
昨日の、ショッピングモールでの出来事が尾を引いて……
夜中に何度も目が覚めて、
その度に家康の顔が浮かんで、
(全然!寝れなかったよ〜〜!)
ガバッと布団から起き上がり、
窓を開けて思いっきり叫びたくなる。
モヤモヤして、混乱して、何かがぐるぐる回ってもう泣きそう。春にあの手紙を貰ってから、今日この日まで長い長い夢物語の中にずっといるような……
ドキドキしてハラハラして、心がぐちゃぐちゃになったり、忙しくて、熱くなって、乱れて……
まるで、日常に追いかけられて鬼ごっこしてるみたい。
あの後、家康も三成くんも幸が駆けつけるまで、ずっと険悪なムード漂わせてたし……。
家康はちっとも離してくれないし、
三成くんは次のデートの段取り始めるし、幸は何か楽しそうにしてるし……。
挙げ句の果てに、
合宿で決着つけるとか言って。
私のことジッと見てくるし……
とにかく二人が言ってる意味が全然わかんない!何か、わかりそうで!でもわかんない!
完全にパニックを起こしてる頭。
枕を膝に抱えて顔を埋めながら、
スリスリと擦り心の中で大絶叫してみる。
すると、
はぁ。ちょっとスッキリしたかも。
朝の光がカーテンの隙間から、
ほんのちょっと溢れた時。
「大分混乱してるみたいだね」
「だって……こんな気持ち初めてで…………って!!!わあぁ!!」
私は悲鳴を上げながら、
もしかして不審者!
咄嗟にそう思い、
反射的に声が聞こえた方向に、
抱きかかえていた枕を放り投げ……
「ぶっ!!」
勉強机の椅子に反対向きに座っていた誰かに、見事にヒットした。