第95章 夏の大三角(4)
「ねぇ、一人??」
「可愛いね〜なぁにしてんの?」
「おっ!携帯持ってんじゃん!番号教えてよ〜〜」
え!?
突然二十代ぐらいの男の人が近づいてきてあっという間に囲まれ、前を塞がれる。
「あ、あの……っ!」
何が起こったのかわからなくて、自然と上擦った声に。
「うわぁ!間近でみるとやばいぜ!」
「めっちゃ可愛いし〜」
「折角だしさぁ。番号教えるだけじゃなくて遊びに行こう〜」
服装の見た目からして軽そうな人達。
軽いノリで詰め寄られ、携帯を持っていた手を一番近くにいた人に掴まれ……
「わ、私一人じゃないので!」
怖くて震えそうになる声を、必死に絞り出す。なのに、男の人は全く気にする様子もなく、今度は別の人に顎を掴まれて……
「誰と来てんの〜?」
かけていたサングラスを上にずらし、
ニタニタと笑う。
「そ、それは……っ」
何て言えば良いんだろう。
後輩?友達?部活仲間?
頭をぐるぐる回しながら、息がかかるぐらいの距離に気持ち悪さが増す。ここまでしつこいナンパは初めてで、怖くて膝がガクガク震えだす。
いつもはゆっちゃんが隣にいてくれたから、強気で断ってたけど……
「は、離して下さい!!」
「震えちゃって、可愛いね〜」
「早く、行こうぜ。何でも買ってあげるからさぁ〜」
グイッ!と腕が引っ張られ、壁にもたれていた背中が浮く。
周りの人もチラチラ見ながら、通り過ぎて行くだけで……
「や、止めて下さい!!」
もう、声も小さいのしか出なくて……
やだっ!
家康!!!
グイッ!
「汚い手で、触んないでくれる?」
俺の彼女に。