第95章 夏の大三角(4)
(姫主様視点)
映画の上映中……
ずっと手を握られて。
(集中出来ないよ〜っ///)
スクリーンを見つめた瞳を、
思わず閉じそうになる。
話題作と聞いて、選んだ青春恋愛。
ヒロインを巡って、
三人の男の子が繰り広げる学園生活。
意地悪な幼馴染。
頼りになる同級生。
優しい後輩。
ヒロインの心は大きく揺れて、自分の気持ちを見失い、複雑に三人の想いが絡みながら終盤は涙のシーンに突入。
普段の私なら、迷走して苦しむヒロインの気持ちを考えて号泣したかもしれない。
でも、今の私は……
「まるで、私達みたいですね……」
(え……?)
繋がれた手。
指が絡まるように動き、
そこに強い力が加わって……
(三成くん……?)
スクリーンじゃなく、私に向けらた澄み切った瞳。薄暗い館内の中、瞬きを忘れたように見つめられ、胸が途端に熱くなる。
「私達って……どうゆう……」
ドキドキして、つい胸を押さながら尋ねると……。
「家康先輩、政宗先輩、私……三人と」
ひまり先輩。
「なんか似ていません?」
頬に指を一瞬だけ添えられて、
思わず顔をスクリーンに戻す。
全然似てないよ///
だって、映画の三人はヒロインを取り合ってて///
(何て返事したらいいの)
繋がれてない方の手で、
ぎゅっとスカートを握り締める。
ラストシーン。
スクリーンの中のヒロインは、放課後に一人の下駄箱に手紙を入れて、裏庭に向かって走り出す。
『待ってるから。早く来て……』
何かを握り締め手を胸の前で組むと、祈りながら三人の中の誰かを待っているようだった。
そして、スクリーンはヒロインの背後で、芝を踏み付ける革靴のアングルに切り替わって……
(誰を選んだんだろう……)
この先の展開を食い入るように見た。
次の瞬間……