第95章 夏の大三角(4)
「まぁ。何つーか。俺は、応援してやるから、そう肩落とすなって!」
「散々、女には興味ないとか言って……卒業式に告白まがいな事したの誰だっけ?」
同じ中学だった幸村。
俺と一番連んでたから、自然とひまりとも仲が良かった。
何だかんだ言って、例外じゃない。
卒業式にちゃっかり、第二ボタンひまりにあげてたし。
「アレは何だそ、の……ノリってヤツだ!」
「へぇ……。ノリであげるんだ」
「記念だ記念。何とも俺は思ってねえから心配するなって!ってかお前、まだ根に持ってたのか?」
慌てるとこ怪しいし。
まぁ。幸村は一応信用してるけど。
俺はストローに口つけ、少し薄まったジュースを喉に流す。
「まだ、大事に持ってるってこの前、話してたからね。そん時、思い出した」
今年三月。
卒業式に出席した時。
ーー先輩達、居なくなると思うと寂しいね。私達が卒業した時、在校生もこんな気持ちだったかな……。
しんみりしながら中学の卒業式の話を語り出して、
ーーそう言えばこの学園はブレザーだから、ボタンあげたりしないのかな?
ーーってか、ボタンなんて中学生ぐらいしか、欲しがんないし。
ーーふふっ。私は今でも嬉しいけど?
ちゃんと幸と家康の第二ボタン。大切に箱の中に仕舞ってあるんだから!
俺は最初から約束してたから、
普通にあげただけだけど。
幸村は……
ーーお前に持ってて欲しい。
珍しく真剣な顔して。
俺にはアレがノリには見えなかったけど。
幸村も無自覚なとこあるし。
「いじけるなって!今度の大会に、ひまりのキス提案してやった恩を忘れるなよ!」
「……恩じゃなくて、余計なお世話」
お陰で絶対負けられないし。
負けるつもりなんて更々ないけど。
そんな話をしている間に……
コップの中身が全部、
俺の体内に消えた頃。
ガラス窓の向こう側……
バカみたいに可愛くお洒落して……
壁にもたれて……
数人の男に絡まれてるのを見た瞬間。
俺は幸村を置いて、
店から飛び出していた。