第95章 夏の大三角(4)
(家康様視点)
合宿を明日に控えた、昼過ぎ。
入道雲を見ながら歩き続けると、バカみたいにご機嫌で俺に向かって手を挙げる人影を発見。
赤いタンクに、チェックシャツを腰に巻いた幸村の姿。
夏休みの休日の今日。
暑い日にも関わらず、ベタベタと手を繋ぎ絡まる若いカップルに、俺はとてつもない苛立ちを覚えながら……
「ったく、何つー顔してんだ?愚痴、聞いてやるから何か奢れよ?」
「はぁ。そっちが呼び出しといて、それ」
幸村は当たり前だ。とか言って、俺の肩を数回叩き歩き始めた。
何でこんな日に、幸村の買い物に付き合わされてんだろ。吐きたくなくても、勝手に出てくる溜息。完全に原因はひまりの所為。
ばか三成とデートなんかするから。
ほんと、何考えてんの。
百歩譲って政宗ならまだしも。
そこまで考えてピタリと足を止める。
(やっぱ、百歩譲っても無理かも……)
半ば幸村に主導権を握られながら、買い物に俺は付き合わされた後。
ファミレスで休憩。
家族連れの多い店内で、比較的静かなガラス張りの窓際。そこの前にあるカウンター椅子に座る。
「で?あいつは今、三成とラブラブデート中ってわけか」
「ラブラブは余分」
俺は机に肩肘を付き、運ばれてきた野菜ジュースのストローを回す。ガラスの中でカラカラと音を立てる氷を見ながら、窓の外に視線を向けた。
市内で一番デカイショッピングモール。見てたら気持ち悪くなるぐらい人混みで溢れ、どの店内もぎゅうぎゅうづめ。
「お前もいい加減、告れよな。先延ばししてっから、他の奴にフラフラ行かれんだよ」
「……あと、一歩。そこまでひまりがやっと近づいて来たのに、今更焦りたくない」
「その割には、十分焦ってるように見えるけどな!」
「……煩い。自分でも自覚してるし」
今だって三成と映画見て、自覚なしで深く考えずに言い寄られて、素直に何でも応じて好き勝手やられてるかと思うと……
本気で気が狂いそう。