第94章 夏の大三角(3)
(緊張??何のだろう??)
「いいよ!自分で持つから!」
少し疑問に感じながら遠慮すると、遅刻したお詫びと言って私の手を引き、
「こうしてたら、もう転けたりしません。……構いませんか?」
「う、うん///」
繋がれた手に、
ちょっと戸惑いながらそっと握り返す。
私は良いけど、三成くん誰かに見られて困ったりしないのかな?
チラッと見た所、
全く気にしてないみたい。
なら、良いかな?
三成くんは歩調を合わせてくれて、人とぶつかりそうになるとスッと身体を引き寄せ、避けてくれる。
本当に紳士みたいな立ち振る舞い。
全然、年下には思えない。
真っ白な入道雲が沸き立つ、
そんな空の下。
映画館に向かいながら、
夏の日差しに負けないぐらい、三成くんの笑顔を見上げる。
「でも、恋愛映画で本当に良かったの?私、割とどんなジャンルでも見るよ?」
「家康先輩とは、恋愛映画を見にいかないと。……この前、聞いたので」
「え?……それが理由?」
確かに前、そんな事を聞かれたような……。
ーー見たい映画ありますか?
ーーう〜ん。夏に話題の作品いっぱいあるからなぁ〜。三成くんは無いの?
ーー家康先輩とは、普段何を見に行かれるのですか?
ーー家康と?恋愛系は一緒に見たことないかな?いつも大体、SFかミステリー系が多いから。
あの時は、全然気にしてなかったけど。それが理由だって言われると、流石に気になってきちゃう。
う〜ん。
顎に人差し指をあて考えている間に、
映画館に着いていて……
三成くんもそれ以上その話に触れないまま。チケットを私の分まで買ってくれようとするのを、必死に止めている間に、すっかり疑問は頭から消えていた。