第91章 『一ヶ月記念作品』時を越えるルージュ
シーツが頭の上に乗せられ、
家康が私の身体を引き寄せる。
「最後は、家康くんがひまりちゃんにルージュを塗るカット取りたいから!」
目を閉じるように言われ、
「これ、一番恥ずかしいかも」
「……何で?」
息がかかるぐらいの距離。
シーツを二人で被って、本当に恋人同士しか出来ないようなシュチュエーション。
「だって、男の人にルージュ塗って貰うとか///」
想像しただけで、顔から火が出そうになる。
「……俺だって、キスしたいの我慢するんだから。我慢しなよ」
最近の家康は本当に無茶苦茶で意味のわかんない事ばっかり。
でも、
私はスッと瞼を閉じる。
「恋人同士だと、素直とか。……ほんと、やばいんだけど」
家康の声。
凄い近くで聞こえる。
ドキドキして、心臓が壊れそう。
それでも、何処かで触れて欲しいと思う自分がいて……。
「ひまりのキス顔。かわい」
ベビーピンクのルージュ。
「この色が一番似合ってる」
私が一番好きな色。
「俺、一番好きかも」
唇が家康の手で、その色に染まった。
こうして撮影は終了。
仕上がりはクリスマス時期までのお楽しみに。
私は帰り道、全色のルージュを貰って超ご機嫌で駅前を歩く。
「あ!皆んなに言うの忘れてた!!」
私はくるっと振り返り、
「スーツ姿、素敵だったよ!」
皆んなの表情が一瞬、ルージュみたいに染まったのは、暗くて見えなかったことにね?
記念作品〜完〜