第91章 『一ヶ月記念作品』時を越えるルージュ
「ふふっ。私も三成君だと緊張が解れるから嬉しいよ?」
「それは、男として意識して貰ってないと。そう言う意味ですか?」
え……。
思わず目を開けてしまった私。
「目と口は閉じて貰って……」
「す、すいません!」
カメラマンさんに注意され、瞼を落とす。
「返事はいりません。ただ、聞いて貰ってもよろしいでしょうか?」
私はコクリと頷く。
「年下だと思うと、つい焦ってしまって」
何を?
声に出して聞けないのが、歯痒い。
「年の差は一つ。それでも、私には大きい……」
「はい!オッケー!」
カメラマンさんの合図。
やっと喋れる。
そう思って目を開け、
顔を横に向けた瞬間……。
ちゅっ。
頬に柔らかい感触。
「み、つなり君///」
「そのコーラルピンクの唇に出来ないのが、残念です」
グイッ!!
「はい、撮影終わり」
頭上から降りてくる不機嫌な声。
家康が急にセットの中に入って来て、私を引っ張り上げる。
グイッ。
すると、今度は反対の腕を三成君に掴まれ……
「年の差なんてすぐに埋めてみせます」
「え??年の差??」
「三成の言うことなんか、気にしなくていい。次は政宗の番」
(な、何この険悪なムードは?)
二人に掴まれた腕。
私を挟んで、鋭い視線が交差する。
「ひまりちゃん!次の撮影前にスタイリングチェックするから!」
その声にやっと腕が解放され……
私はまだ感触が残る頬を押さえながら、スタイリストの所に移動した。