第91章 『一ヶ月記念作品』時を越えるルージュ
一旦スタイリストにひまりちゃんの、ヘアセットとメイクのチェックをさせ撮影再開。
「今度はひまりちゃんが椅子に座って!!」
俺はセットの中に入り、彼女に両脚を横向きに揃えさせ、裾のスリットから片脚を覗かせると、顔だけを後ろに向かせる。
「光秀さんは椅子の後ろに移動して貰って……背もたれに片手をついて下さい!」
指に紅赤ルージュを挟んで貰う。それをひまりちゃんに差し出すようにして……
「見つめるように視線を絡ませて……」
そう指示を出したはずなんだが。
「明智先生!///視線そこじゃなくて、私に……っ!!」
「上からだと、一層眺めが良い。無理を言うな」
なかなか順調には進まないようだ。
「次は、ひまりちゃんが足を組んで正面を向いてくれ!その前に秀吉くんが屈んで……」
シンデレラにガラスの靴を履かせるようなイメージ。俺はそう伝え、今度はひまりちゃんに淡赤のルージュを持たせ、
「顔の横に添えるようにして、カメラ目線で!!」
パシャパシャ!!
カメラマンがフラッシュを焚かせ、撮影を始める。
「前にした芝居の練習みたいだな」
「ふふっ。そうですね」
「こらこら。ひまりちゃんは色っぽい表情でカメラ見て!」
「が、がんばります///」
まるで、兄弟みたいな二人だな。
そう思いながら、俺は仁王立ちしてセットの中の二人を見つめる。
出来れば、これからも専属でモデルをお願いしたい逸材だ。
順調そうな撮影に、俺は少し休憩しようとセットから離れると……
(完全に睨んでるな。アレは)
背もたれ付きの椅子を反対向きに座り、鋭い視線を向ける徳川くん。俺はスカウトした時に唯一、一人だけ撮影に気乗りしていなかった事を思い出し、話し掛けた。