第91章 『一ヶ月記念作品』時を越えるルージュ
スタジオ入りした黒のスーツ姿の六人。
(その辺りのモデルより間違いなく、全然イケてるな)
「やばい〜めっちゃ格好良いじゃない!」
「全員素敵〜〜!!」
撮影現場にいる女性スタッフ。
普段から男性モデルは見慣れているはずだが、それでもオーラを放つ六人を呼吸を失うぐらい食い入るように見つめ、吐息を零し出す始末。
和の三人には、
背広着用とネクタイを締めて貰い。
洋の三人には、
白シャツとループタイを付けて貰った。
「いいねぇ!イメージ通りだよ!」
「なんか、堅苦しいし……」
「家康達は洋の雰囲気だからわかるが。和の雰囲気の俺らも同じ格好とはな」
シャツの襟を引っ張り、不服そうに眉を潜める家康君の横で、秀吉君が腑に落ちない表情を浮かべる。
俺は六人に粗方の
ポージングのイメージを伝えた後、
「主役はあくまでも、ひまりちゃんだ。彼女には和と洋でガラリと雰囲気を変更して貰う」
時を越えて、
幅広い年齢層の
女性に愛されるルージュ。
家族や恋人におねだりしたくなる。
自分の日頃のご褒美に欲しくなる。
昔を思い出し付けてみたくなる。
時間も想い出も
色褪せないルージュ。
俺はそれを目指している。
「楽しみですね。ひまり先輩の華麗なる変貌が間近で見れるなんて……はぁ。想像しただけで……」
「三成、勝手に変な事したら許さないから」
「お前、人のこと言えるのか?いきなりひまりの唇奪うなよ?」
「……自信ないかも」
俺は三人の会話を聞いて、彼らの日頃の学校生活の風景が何となく想像できた。
(初々しい感じだな。出来れば広告看板用の大カットは、この三人の誰かに……)
三人の顔を見比べ、頭の中にあるイメージを巡らせていた時だ。
スタジオから凄いどよめきが起き、
「まずは、和の衣装でモデルさん入りました!!」
俺は、あやうく近くにある撮影機材をひっくり返す所だった。