第90章 夏の大三角〜開幕〜
「本気なんだ。だから、もうこんな風に活動して見張るような真似は止めて欲しいんだ」
先輩の真剣な声。そこから、ちゃんと本気の気持ちが伝わる。
私だけじゃない。
ファンクラブの子達にも、しっかりとそれは伝わったみたい。少し間があった後、パタパタと数人の女の子が私の存在に気付かず、廊下を走り去って行くのが見えた。
皆んな泣いてた。
腕で目元を隠してたから、
見えなかったけど。
きっと……
私はズルズルその場にペタッとお尻をつける。
呆然とした頭を必死に動かす。
一度お姫様役の練習相手。
私はした。
でも……
他にも同じようにした子がいるもしれないし。
それに、
秀吉先輩は大切な人って。
好きな人って言った訳じゃない。
『貴方はある、戦国武将の姫君に選ばれました』
まさかね?
先輩が運命の相手なんて。
ありえない!
うん!!
私は頭を軽く横に振り、立ち上がる。
きっと他にも練習相手をした子が、いたに違いない。
その子の事なんだ!!
そう思い、秀吉先輩の姿がない事を確認してから教室に荷物を取りに向かった。