第90章 夏の大三角〜開幕〜
ホームルームが終わり、生徒が次々に下校を始めた最中。私は重い足取りで、一階に向かって階段を降りていく。
職員室前まで辿り着き、深呼吸。
予想通り織田先生に呼ばれ、
中に入って早々……
「覚悟しておけ」
わかってます。
もう既に補習は覚悟してたから。
だからって……。
私は補習実施日を見て、流したくなくても生理現象のように瞳が潤み……その場でガックリと肩を落とした。
「文句でもあるのか?」
先生は机の上に肩肘を突き、苛立った
ように、もう片方の手で指先をトントン叩く。
「……うぅ。ないです」
大アリだよ!
心の中の私はそう叫んでる。でも、織田先生の威圧的なオーラ。そして何よりも赤点を取った自分の責任。
(言えるわけない。でも、何も一週間もしなくても……)
貰ったプリントを横にズラし、チラッと先生を見る。すると、バッチリ目が合って……気まずくなり慌てて視線を戻す。
プリントと睨めっこしていると、
先生の口が開き……
「貴様の出来次第で、期間減らしてやる」
「ほ、ほんとですか!?」
普段なら、
絶対にそんな事を言わない先生。
思わず声がひっくり返ってしまう。
「あくまでも、それは予定日だからな」
どうやら合宿が近いことも考慮してくれたみたいで、その代わり死ぬ気でやれ。と、言われ……私は両手で拳を作るとやる気満々です!とを言って意思表示見せた。
すると、先生はフッと息を吐き一瞬で表情を柔らかく崩すと……
「補習は会議室で行う」
「はい!」
私の返事を確認すると、
先生は椅子から立ち上がる。
「ついでに宿題も持って来い。教えてやる」
そして大きな手で私の頭を包み込むように撫でてくれた。