第88章 『二つの夢物語』
ランチとか言いながら、私達がご飯にありつけたのは三時。久々に会ったゆっちゃんは、すっごく大人っぽくなった気がして……
「何か、私ちっとも成長してないなぁ」
自分に自信が失くなる。
するとゆっちゃんは、ハンバーグを食べていた手を止め、フォークをビシっと私の方に向けて、
「何、言ってんのよ〜世の女が羨むような婚約者と結婚間近に!」
「それ、言われると。ますます自信失くしちゃうよ……はぁ…」
重い息を吐き、項垂れる私にゆっちゃんはマリッジブルーだねそれ。と、ヨシヨシと頭を撫でてくれる。
「その内、幸せすぎるーーっ!とか言って、ノロケ聞かされるんだろなぁ」
「もぅ〜そんなに、日頃から惚気てた?」
「まぁーね。昔から。でも最近の一番は!プロポーズされた時だね!アレは完全にノロケてたし!!」
ゆっちゃんは、フォークを一旦お皿の上に置く。そして、その時の私の真似をするように両手を頬に当て、頭を軽く振ると……
「ど、どうしよう///きゅ、急すぎて変な返事の仕方しちゃったかも!///だ、だっていきなりだったし!///まだ、当分先かな?って思ってたから///きやぁ〜〜!」
ゆっちゃんは、うん!我ながら最高に似てる!と、自画自賛して得意げに頷く。私は恥ずかしくて顔が上げられない。チラッと視線だけ向けて、ごめんねと謝った。
「その婚約指輪だって、特注品なんでしょ?十分に愛されてんじゃん!」
そうなんだけどね。
大好きなのオムライスを口に、ゆっくり運ぶ。トロトロのフワフワ卵は私の中で幸せの味。
でも、不思議と
食欲が進まない。
何だろう。
幸せだけど……
寂しい。
全然逢ってないわけじゃ、ないのに。
また、落ち込む私。
「また、近い内にゆっくり話そう!」
「うん!ありがとう!!」
ランチがほぼ夕飯に。
暗くなりつつある空。
時間のせいか、雲のせいか。
ポツリポツリ降り出した雨。
気づいたら自然と足は薬局じゃなく、病院の方へと向かっていた。