第88章 『二つの夢物語』
グルメ雑誌に、
最近取り上げられる事が
多くなった政宗のお店。
客足が凄い伸びて
店内が狭くなったからと、
少しリニューアルしたばかり。
でも、和の雰囲気は大事にしたいから、外観は昔と変わらずそのまま。
(それにしても……)
まだ、
営業前にも関わらず外には凄い行列。
どうしよう。
もうすぐ開店時間だけど……
並んで中に入るまでの時間は今の私にはなくて、外でウロウロしながら悩んでいると……。
「何やってんだ?一人で百面相して?」
「政宗!」
営業中の看板を持って店外に出て来た政宗。私はグッドタイミング!と思いながら、お仕事の邪魔するわけにも行かず……
「また、後で電話するから!忙しい時間にごめんね?」
「気にするな。お前の顔、見たから仕事頑張れそうだ」
頭をぽんぽん叩く大きな手。
でも、この手から作り出される料理は繊細で美味しくて、愛情がいっぱい込められている。
私は新作のスイーツ楽しみにしてるからと伝え、その場を後にした。
駅前に着き、あるショーウィンドウの前で立ち止まる。高校生の時みたいに、顔を近づけガラスに手をそっと置く。
中に飾られたウェディングドレス。
何度見ても見飽きない。
洋服のドレスも、和風のドレスも
どっちも違う魅力があって、綺麗。
高校生の頃は
凄い遠い未来に思えたけど……。
私はガラスに置いた自分の手。
薬指に光る石を見て、
頬の筋肉がつい緩んでしまう。