第88章 『二つの夢物語』
ひまりがひまわりの種を取ろうと、一生懸命背伸びをしていた時だった。
「写真撮るから、家康と手繋いでくれる?」
顔を真っ赤にしながらひまわり畑に現れた家康は、おずおずと手を出す。
「いっちゃん!可愛い〜お姫様みたい!」
自分とお揃いのワンピースを着ているのを見て、ひまりは嬉しそうに手を叩ききゃっきゃっと騒ぎながら、自分の手を絡ませた。
「ちがう!これは、元気になって貰うために着ただけ!」
家康は口を尖らせ
困ったように眉を下げ、
「元気に??」
「い、いつか父さんみたいになりたいから!///その練習!///」
俺がお姫様なんじゃなくて、大きくなってお姫様貰う為にがんばってんの!
そう必死に訴えた。
「???」
家康はひまりと手を繋ぎ、
カメラの前に立つ。
「二人共〜〜!笑って〜〜」
家康の言っている意味は、
ひまりには理解出来なかったが……
それでも、大好きな幼馴染とお揃いのワンピースを着れた事が嬉しく、満面の笑顔を浮かべる。
向日葵畑。
ひまわり柄のワンピース。
ひまわりのような笑顔。
シャッターを切った、その一枚の写真には「元気」の想いが込められていた。