第88章 『二つの夢物語』
部屋に入って早々、ひまりはベットの上で本を読んでいた家康に、
「おばちゃんにして貰ったの!かわいい?」
その場で、
くるくると回りながら尋ねる。
「う、うん。まぁ……」
ぎこちない返事をしてひまりから出掛ける話を聞き、家康は本をパタンと閉じる。
「ねぇ、いっちゃん!さっき言ってたわるい予感てなぁに?」
「なんか昨日、おばさんと母さんが話をしてるの聞いて」
私のお母さんとおばさんが?
ひまりが尋ねると家康は頭をカリカリと掻きながら、昨夕聞いた二人のの会話を話した。
ーー以前、病院に入院していた患者さんが、家康をどうも女の子と勘違いしちゃったみたいで。
ーー家康君、女の子みたいに可愛いからね〜
ーー主人の書類を届けに、一度家康とひまりちゃんを病院に連れていった事があって……。二人にお揃いのワンピースを仕立てたから、取りに来て欲しいって連絡があったの。
ーー折角だから、二人に着させて写真でも送ってあげたら喜ぶんじゃないかしら?
家康はその話を聞いていたからこそ嫌な予感がして、さっき降りて行かなかったのだ。
「いっちゃんとおそろいのお洋服着たい!」
「ひまりは女の子だから、いいけど。俺はやだよ」
「二人共〜〜そろそろ行くわよ〜」
「「はーい」」
返事をした後、家康は少し重い足取りで立ち上がる。そんな様子を見ていたひまりは、小さな手に自分の小さな手を絡ませ……
ブンブンと振り回し、早く行こう!ふわりと笑った。