第83章 『七夕の織姫レシピ』
笹の葉をリビング横にあるデッキに飾り、夕飯は庭で食べる事になった。
四人でテーブルを囲み、
「ひまりちゃんが、作ってくれたのよ」
「それは楽しみだ。早速、頂くよ」
「はい!お母様がすっごく優しく教えてくれて!」
「あらあら。すっかりおばちゃんから、お母様に癖づけちゃったかしら?」
「あ!ふふっ。ごめんなさい〜」
舌をペロッと出して、照れるひまり。
「うん!美味いよ。これなら、いつでも家康の嫁に来て貰えるな」
「もう!おじさんまで!家康に怒られますよ?」
だから、怒んないし。
口に出して言いたい。けど、両親の前で言う訳にもいかず。ここは、グッと堪える。
「美味しい?」
「……普通に」
美味しいに決まってる。
あんだけ愛情込めて貰ったし。
部屋に行ったら、いっぱい甘やかしたいぐらい。
「あらあら照れちゃって」
「少しは素直にならないと、ひまりちゃんに嫌われるぞ」
「……はいはい(わかってるし)」
サラッと両親のお節介をかわす。
「後で短冊にお願い書こうね!」
「……高校生にもなって?」
「お願いごとするのに、年齢は関係ないもん!」
まぁ。そこが可愛いんだけど。
何年振りかの七夕祭り。
ひまりが後片付け手伝ってる間に、入浴を済まし部屋に戻る。
すると、コンコンと部屋をノックする音が聞こえて、返事をすると……ドアが開く。
てっきり、ひまりかと思ったのに部屋に入って来たのは、
「今年は違う、お願いごと書けるんじゃない?」
「……何の話?」
惚ける俺に、母さんはクスリと笑い短冊を机の上に置くと部屋から出て行った。
(ってか、いつまで覚えて……)
ーーまた、今年もこのお願い?
ーー……かなうまで。コレしか書かない。
ーーでも、これだと大人になるまで難しいわよ〜。
小さい頃、そう言われた俺は一行文字を書き足した。
『大人になるまで、一日だけ
ひまりをおれのお嫁さんにして下さい』
確かに。
一応今日、叶ったしね。
コンコン。
少し遠慮がちなノック。
「家康、入るよ?」
やっと来た。
一日限定の俺のお嫁さん。