第83章 『七夕の織姫レシピ』
俺が一人で葛藤を繰り返している間に、料理がようやく完成に近づいてきたのか、二人の雑談は減り本格的に、味付けの話に変わる。
「徳川家は健康思考だから、酢飯は砂糖よりもお酢を多めにして……」
「ふむふむ。あっ!でも、このお酢!甘さも程良くあって美味しい!」
「でしょ?後、艶の出し方は〜……」
ひまりは、真剣な表情で徳川家の味をメモと自分の舌で覚えていく。
(ってか、何でそんな必死なの?)
お礼って言ってたけど。
もう、そんな理由受け付けてあげないよ。こんだけ人の心乱れさせといて。
変な妄想、ずっと止まんないし。
気が緩むとまた、出てくる俺の脳内限定ひまり。
妄想の中では……
ーーこれで少しは、徳川家のお嫁さんに近づけたかな……。
ーー何言ってんの。料理なんて、ひまりの愛情が込もってたら、それだけで十分。
ーーで、でも一刻も早く覚えて、家康のお嫁さんになりたいから///
頬に両手を添えて、もじもじするひまり。俺は甘やかしたくて堪らず、
ーーい、家康///
ーーなら、俺も一刻も早くひまりに相応しい男にならないとね。
お姫様抱っこして、リビングのソファに沈めて……。
ーー愛してる。
ーーわ…たし……も。
二人で創り出す。
熱い愛の想い出……。
(俺とひまりの愛のレシピの創り方。ほんと、誰か教えて///)