第83章 『七夕の織姫レシピ』
リビングに入って、真っ先に目に飛び込んだ笹の葉。仲良くキッチンに立つ母さんとひまりから、事情を聞くと……。
「この前おばちゃんと、七夕祭り久々にしたいね!って盛り上がって!」
ひまりは嬉しそうに笑い、飾り付け頑張ったんだよ!と得意げに話す。
(なるほど。で、この飾り付けね)
笹の葉を、彩った折り紙の飾り。
短冊はまだ飾られてないみたいだけど、後で書くつもりなのかリビングの机にそれらしい紙とペンが置いてある。
「徳川家の味、しっかり覚えてね?」
「はーい!よろしくお願いします!」
「まず、材料はまぐろ、桜エビ、アジ、お茶、ワサビは外しちゃダメよ!」
「この五品目が必ず……っと」
ひまりは、メモを取りながら一生懸命料理を始めた。
俺は横目で二人に視線を向けつつ、リビングにあるソファに座ると、
クッションを抱え、
(何か///花嫁修業みたいだし!)
二人にバレないように、
ニヤけそうになる顔を必死に誤魔化す。
母さんから徳川家の味を、一生懸命教わるひまり。何か俺へのお礼とか、さっきチラッと言ってたけど。
「おばちゃん。コレはどうしたら……」
「ひまりちゃん。さっきの約束忘れちゃダメよ〜」
「あっ!ふふっ。お母様?コレはどの様にすれば良いですか?」
(なっ!///)
何て呼び方させて……///
仲良い嫁姑のような会話に、
つい聞き耳を立ててしまう。
意識は完全に二人に向けたまま、とりあえず平静を装う為、参考書を取り出しそれとなく読んでるフリ。
そして、
チラッと横目で、
ひまりを盗み見する。