第81章 「白詰草の花嫁(11)家康様編」家康様side
「こうされるの嫌?」
「ドキドキして、恥ずかしいけど……嫌じゃないよ」
「なら、キスは?」
あの小屋で確かに
ひまりは、目を閉じた。
俺がくしゃみなんて
しなかったら、あのまま。
ひまりは嫌とは言わず、
わからないと答える。
「でも、家康好きな子いるのに……」
「さっき言ったよね。俺の気持ちは、考えなくて良いって」
「そんなの無理だよ」
無意識で考えちゃうし。ひまりのまつ毛。何処と無く切なげに揺れているように見えて、
「ひまりが、その宿題出来たら。俺の好きな子、誰か教えてあげる」
出来たら二人で、
答え合わせする約束を交わす。
「たまにヒント。……出してあげるから」
「ヒント?」
「確実に答えに近づくヒント」
意味がわかったひまりは、口籠もり真っ赤になって俯いた。
夏休み中も、夏休み明けも。
どっちも楽しみ過ぎ。
9割まで近づいたひまり。
また、フラフラ飛んでかないように注意しないと。
特に、政宗と三成は要注意。
邪魔なんかさせない。
「腕の怪我、大丈夫??」
「そっちこそ、呼び出し。もう、されてない?」
「されてないよ!」
俺は息を吐き、なら良かった。とぎゅっとして、ひまりの肩に顔を乗せた。
花嫁ごっこ。
言い伝えごっこ。
プロポーズごっこ。
ごっこじゃなくなる日。
近い気がする。
「家康……近いよ///」
「早く、気づかせたいから」
合宿、夏祭り、行きそびれた水族館、プール、花火大会。
ひまりとの夏休みが待ち遠しくて、
「俺と以外。デートしないでよ」
「え?でも、三成君にもう、映画誘われたよ?後、政宗はバイクの免許取ったから乗せて貰う、約束してて」
はぁ…。
捕まえても、すぐ飛んでく俺のヒメボタル。男を引き寄せ、綺麗に光り続けるの、どうやったら止めれるかが俺の夏の宿題。
「久々にお泊まり会したいね!」
「母さん、喜ぶからおいで」
俺もだけど。
ーーうん!約束!!
石碑の前で花冠を被った、小さい頃のひまり。
「約束ね!!」
俺の腕の中で、花冠と三つ葉のヘアピンをつけたひまり。
花みたいに、ふわっとした笑顔。
変わってないようで、変わっていた。