第11章 手紙と「謎の大学生」
夕暮れの住宅街。
オレンジ色に染まった西空。
そんな空の下で、トボトボとコンクリートに落ちた二つの影を見ながら、家に向かって歩いていた。
「あっ!すっかり、秀吉先輩からの伝言忘れてた!」
「……先輩からの伝言?」
「ふふっ。明日は覚悟して、登校するように!だって」
「………ってか、何で担任あの赤鬼なワケ?絶対、仕組んでるし」
「家康のこと、だぁ〜い好きなんじゃない?」
からかい口調でそう言うと、家康はバッと隣いる私の方に顔を向けてボソッ、と呟く。
「もっかい」
「へ?もっかい?」
何が?首を傾げると、さっきの言葉をもう一回と言ってとグイグイ迫られ……
「えっ、ちょ、ちょっと近すぎ……」
「ほら早く、言って」
なにを!?
追い込まれた私の背中が塀にぶつかる。
すると、
ブンッーーッ!!
物凄いスピードでこっちに向かって来る一台の赤い車。地面を引っ掻くような音を鳴らし、家康の背後でピタッと止まると……
ゆっくり車窓が開いた。
「新学期早々、俺を手こずらせた上、姫宮に迫るとは。……いい度胸だ」
「織田先生!!」
「げっ!!」
家康の顔が一気に引き攣る。
先生は家庭訪問に来たと言って、不敵な笑みを浮かべ……
今にも逃げ出しそうな家康を、無理矢理助手席に引きずり込んだ。
「貴様も赤点など取れば……」
「わ、解ってます!頑張りますから!」
次、赤点取ったら部屋まで押しかけると散々脅されてる。何が何でも頑張らないと!
颯爽と走り出した車。
家康の家、すぐそこなのに……。
って!私の鞄!
家康が持ってくれていたままなのを思い出し、慌てて徒歩1分の道のりを走った。