第80章 「白詰草の花嫁(10)家康様編」
「ご、ごめんねっ///」
(もう、何やって///)
慌てて体勢をなおして、
降りようとすると……
「離さない」
コツンとおでこ同士がぶつかる。
家康と目線の高さが同じになって……。
腰に回された腕。
その所為で身動きが取れない。
(こんな体勢っ///無理だよ///)
恥ずかしいから、離して///
そう、お願いしても
家康は一向に離してくれなくて……。
「ねぇ、それ貸して」
家康は私の手からスッと花冠を奪い、
「久し振りに、花嫁さんごっこ」
昔、二人でよく遊んだごっこ遊び。
私が花冠を作ると、
いつも家康が被せて……。
スゥと息を吸う音。
翡翠の瞳が私の姿を映す。
「徳川家康は、神の訓えを守り……生涯を持って姫宮ひまりを、愛し続けることを誓います」
そう誓いの言葉を述べて……。
私が……。
トクトクッ……。
「姫宮ひまりは、神の訓えを胸に、生涯……徳川家康を愛し続けることを……」
そこまで言いかけて飲み込む。
ごっこ遊びしてた頃と、今は違う。
言葉にしたら、本当に……。
「家康///もう降ろして」
「何で?まだ、ごっこ遊び終わってない」
「だって!///もう高校生だし///それに!小さい頃は気にしてなかったけど、普通はプロポーズが先で///」
今、思えば。
すっごい恥ずかしいごっこ遊び。
いきなり、真似事で結婚式とか。もう本当に何考えてたんだろう。
「プロポーズごっこは、確かにした事ないかも」
すると、家康は私の髪を耳にかけ……。ポケットから小さな紙袋を取り出すと、中身を手の平にコロンと乗せた。