第80章 「白詰草の花嫁(10)家康様編」
しゃがみ込んだ私は、そろ〜っと顔に乗った本を指で摘み、
持ち上げようとした時。
腕を掴まれ、家康の口が動く。
「ばーか」
「あ!やっぱり、狸寝入りしてた」
私はクスクス笑いながら、その場に座り込むと周りに咲いた白詰草を見て、久々に花の冠を作り始めた。
「何、呑気にやってんの」
「すぐ、終わるから。山で助けて貰ったお礼。まだしてなかったでしょ?」
だから可愛い〜!
いっちゃんに花冠作ってあげるね?
ちょっと意地悪っぽく、そう言ってみる。
すると、家康はむくりと起き上がり、
「その呼び方。今度したら、塞ぐよ」
ココ。
意地悪な笑顔を浮かべた後、
家康は私の唇を突く。
トクンッ。
触れられた、瞬間。
唇と同時に胸も熱くなる。
煩く鳴る鼓動に気付かれないように、
もくもく手を動かし……。
「はい!出来た!!」
花冠を前に突き出すようにして、差し出す。
すると、家康はいらない、と口を尖らせた。
折角、作ったんだから!ね??
私は身を乗り出し、
立て膝をつきながら近づいて……
「ほら、頭下げて!絶対、似合うから」
「ちょ、こら!いらないって……!」
受け取ってくれないと、困る!
私もだんだん意地になって、家康の頭に何とか被せようと、更に身体を近づけて……
「わあっ!!」
バランスを崩し……
「っ……!!」
気づいたら、
家康の膝の上に乗っていた。