第79章 「白詰草の花嫁(9)家康様編」家康様side
夜の街。
すれ違う人は、チラチラと視線を浴びながら、俺達は無言のまま睨み合う。
「幼馴染とか関係ない」
(単に、俺が守りたいだけ)
「ひまりが嫌がってたら、放っておけない」
家康……。
ひまりの呟く涙まじりの声。
舐めないでよ。
俺の片思い。
幼い頃から数えたら、
やばいぐらい長いし。
背中からひまりの身体を隣に移動させ、片腕の中に閉じ込めた。
「ならば、大会の戦利品になって貰う」
「……何それ」
「先輩、冗談はそれぐらいにしといたらどうっすか?」
「俺が決めた事に、口挟むな」
幸村は謙信の肩を掴むが呆気なく払われ、ひまりが俺の腕の中で、不安げに戦利品って?と聞いてくる。
すると、氷みたいにピクリとも表情を緩めなかった謙信。微かに笑みを浮かべ、
「個人戦で勝利した方の、女になれ」
「え!?む、無理です!勝手に決めないで下さい!」
「ひまりの意思を無視するような賭けなんて、俺は受けないよ」
そんな汚い手で欲しいワケじゃない。
ちゃんと俺はひまりの意思が、欲しい。
「負けるのが、目に見えてるからか?」
「あんたに負けるワケないし」
「ならば、良いではないか」
「……無理」
帰りたいのに、ほんとしつこい。
全然引き下がんないし。
ひまりも俺達のやり取りに、困ったような表情をしていて……。
「あぁ!もう面倒臭い!付き合うのは無しつーので、ひまりからのキスが戦利品で良いだろ!?」
「ちょっと、幸!何、言って!///」
こうなったら、仕方無いだろ!
何でそうなるのよ!
今度は、幸村とひまりが言い合いを始める始末。
(キスなら、ありかも)
ひまりからなら、
意思も無視してないし。
その誘惑に、一気に俺の心が傾く。
「それで良いだろ」
「ま、待って!わ、私一言も良いなんて」
「……わかった」
「え!?」
家康のバカ。と赤面しながら、胸を叩いてくるひまり。絶対、負けないから大丈夫だし。と言うと、そうゆう問題じゃない!と頬を膨らませた。
とりあえず、それで話の収集がつきやっと帰れることに。