第79章 「白詰草の花嫁(9)家康様編」家康様side
気づいたら、
ーー酷いこと言ったんだから、
ちゃんと謝ってあげて!!
ひまりの怒る声が聞こえて、
教室の後ろで人集りが出来てた。
ーー泣かす事しか出来ないの?
ーー邪魔すんなよ!お前ら、ただの幼馴染だろ?
ーーチビ徳川の癖に、生意気なんだよ!
中学に上がって間もない頃。ひまりは、ほんとお節介ばっかで。女子が揶揄われて泣いてると、一緒に泣きながら謝るように、男子に突っかかってて。
ーー家康っ!!
ーーっ!!
ーーチビは引っ込んでろよ。
ひまりは余計に泣くし。小さい頃からずっと守ってやりたいのに、あの時の俺はまだチビだし。弱かった。
ーー違う……。家康はただの幼馴染なんかじゃない!!
ーーじゃぁ、何だ?彼氏とでも言うのか?
ひまりのこと好きな癖に、まだ小学校生みたいな奴ら。俺の前に、立つひまりにちょっかいかけ出して。
あの時に、俺は。
ーーどいて。本気で怒ったから。
ーーだめ!!私にとって家康は一番大事な幼馴染だから!喧嘩なんかして欲しくない!!
幼馴染を壊したくなった。
ひまりに対する感情が、別のモノに変わった瞬間。
幼い恋が本気の恋に変わった。
ーーも、うっ……。喧嘩しないでって言ったのに。
ーーいっ!もうちょっと、優しく手当て出来ないワケ?
ーーだっ……て、手が震えて…上手く出来な…い。
ーーまた、泣く。初勝利にご褒美ぐらいないの?
ポロポロ落ちる涙……掬って、
ーー俺、バカみたいに笑うひまりが見たいんだけど。
ーーバカみたい……って。普段から、そんな風に笑ってるつもりないよ?
泣きながら笑うひまりが、欲しくて欲しく……守ってあげたくて、甘やかしたくて堪らなかった。