第77章 「白詰草の花嫁(7)秀吉様編」
白詰草を持った手が震える。
「先輩……すっごい、ドキドキして……」
先輩の手が私の頬を掠め、
「ひまり……」
私はぎゅっと、目を閉じて……。
両手を握りしめた。
「すっごい!素敵な演技でした!」
「は??」
ぽかんと口を開けた先輩に私は、ドキドキして迫力のある演技だったと、力説する。
「まるで、プロポーズみたいな台詞だったから。ほんと、びっくりしました!」
台詞が急に殿様から、先輩っぽいのに変わった時は驚いたけど……。そこがまた先輩らしくて良かったです!と、伝えた。
「そ、そうか。なら良かった」
「はい!本番、楽しみにしてますね!」
先輩の手を握り、笑顔を向ける。
「はぁ……。ほんと手強いな、お前」
先輩はフラッと一歩後ろに下がり、何故か頭を抱える。具合悪くなったのかと思って、心配になり顔を覗き込むと、制服に着替えてくるように言われ。
「……約束どおり、送ってやるから」
「実はちょっと、寄り道したい店があって。……まだ、明るいし一人で大丈夫です!」
ずっと気になってた三つ葉のヘアピン。
まだあるか確認したかった私は、先輩のご厚意だけ頂いて、丁寧にお断りした。
「このお花。代わりに頂いてきますね?」
白詰草を顔の前でゆらゆら揺らして、道場に再び戻り、着替えを済ます。そしてアンケートが入ったダンボール箱を見て、
(すっかり忘れてた!)
急いで、織田先生の元に向かった。
案の定、一体何をしていたかを事情聴取?のようなものを受けて……。校門を出る頃には空が、オレンジ色に染まり始める。
急いで、雑貨店に向かっていると……。
ドンッ!!
前を歩いていた高校生に、
ぶつかってしまい……
「わあっ!!ご、ごめんなさい!」
慌てて謝り、顔を上げると……。
「いっ!!何処見て……あっ!!」
お互い指をさして、
「幸!!」
「ひまり!!」
中学の同級生、真田幸村。
通称、幸が手を挙げ久しぶりと笑った。