第75章 「白詰草の花嫁(5)秀吉様編」
(政宗は、もう先に帰っちゃったから……)
メールで、家康に連絡する。
『今日、予備校だよね?ちょっとだけ、秀吉先輩に稽古つけて貰ってから、帰るね!』
すると、すぐ返事が来て。
『解った。……明るい内に帰んなよ』
はーい!と、文字を打ち込み送信っと。
「お前ら、恋人同士みたいなやり取りしてるんだな?」
「そんなこと……えっ!!」
私は危うく携帯を落としかけ、凄い勢いで背後に立つ先輩から遠ざかる。
ここ女子更衣室ですよ!
と、半ば叫ぶように声を上げると先輩はサラッと、
「胴着の着付けから、教えてやろうと思ってな」
ファンの子なら間違いなく、一瞬で悩殺したかもしれない。私の胴着をロッカーから取り出し、軽いウィンクをする先輩。
「せ、先輩!///冗談はやめて下さい!」
「冗談は言ってない。下にキャミ着てるんだろ?気にするな」
先輩は爽やかな笑みを浮かべながら、私にじりじりと近づき……。
リボンとブラウスをあっという間に、脱がされキャミとスカート姿になる。
「下は履いてないから、む、無理です///」
「俺は気にしない」
「私が気にしますっ!!///」
何とかスカートは守りきり、先輩が後ろを向いている間に、袴を履いた。
鏡の前に立つ私に、先輩は腰紐を手際良く結ぶ。後ろから胸襟を合わせ鏡の中の私に視線を向けると、
「お前、華奢な割に……」
「い、言わないで下さい!///この前、副部長に散々からかわれたので、気にしてて///」
童顔な顔立ちと身体のバランスが、究極の何とかって言われて……。
本当は高校でもバスケをやるつもりで、身長を気にして牛乳を毎日欠かさず飲んでた私。栄養は見事に身長ではなく、別の部分に。
(皆んなには贅沢な悩みって言われるけど、服のサイズとか何気に困るから……)
先輩は私の背中を軽く押す。
着付けが出来た合図。
「締め付け感とかも丁度良いです!」
「だろ?しっかりと型を取るには、胴着の着付けも大事だからな」
道場に戻り、早速見取り稽古を付けて貰うことに。