第10章 動き出す「運命」家康様side
「………格好良いなんて、思ってても言えないよね」
ピクリとその言葉に反応して、目を開けそうになる。
(………ばーか///)
そんな可愛い台詞言ってる顔、寝てたら見れないし。
ってか、想像しただけで……
「……………かわい」
つい溢れた本音……
後で、引っ叩かれるのは解ってる。
泣かせるかもしれない。
グイッ……
それでも欲しい。
ひまりの腰元に片腕を回し、
引き寄せる。
気づかれない様、うっすらとだけ目を開け……
顔が近づいたタイミングで、もう片方の手で頭を掴んだ。
そして……
ふにっ。
唇を重ねる。
……この感触、やばい。
(さすがに舌入れたら、バレる?)
一気に駆け上がる熱。
このまま押し倒したい。
リボン解いて。
スカート捲し上げて。
ブラウスのボタン外して。
ーーい、えやす……
乱れた制服姿で俺の名前を呼ぶ、ひまり。
妄想だけでかなり、やばい。
(………今日はこれぐらいで我慢しとく)
渋々、唇を離して……
「……………あ、れひまり」
寝惚けたフリして瞼を持ち上げる。
「〜〜〜〜〜〜っ///」
すごい速さで俺から離れた。
震えた指先で自分の唇を抑えて、プルプル子鹿みたいに悶えてて、可愛すぎなんだけど。
それを見て、思わず……
「…………ワサビと間違えた」
子鹿みたいな愛犬を言い訳に使う。パクパク口を動かすひまりを横目に起き上がり、態とらしく欠伸をした。
多分、速攻でビンタ飛んでくる。
そう予想しながら、下手に構えず受け止める準備。
「〜〜〜〜っ!!ばかっ!!」
バチンッ!
「っ、て……!!」
予想より重い平手に、思わず頬をさする。弓道部に入った所為?微妙に腕力上がってるし。
「ファーストキスなのに!!ワサビと間違えるなんて!」
涙目で、俺の胸をトントン叩くひまり。
「ファーストキスって……昔、したし」
「小さい頃のは、ノーカウントなの!!」
ノーカウントって。
普通に、傷付くんだけど。