第10章 動き出す「運命」家康様side
入学式なんて、かったるいし面倒。
三成の声なんて朝から聞きたくないし。
俺はフラフラ歩きながら、昼寝でもして時間を潰そうと裏庭に向かった。
陽気も良い。
青々と生い茂った芝生も、丁度良い寝心地。
静かだし、滅多に人も来ない。
俺はネクタイを緩め、二、三個シャツのボタンを外す。
ポケットから医学書を取り出し、ブレザーを脱ぐと丸めて枕がわりにする。
(眩し………)
照りつける太陽。
芝生に倒れ込みながら仰向けに寝そべり、顔の上に本を乗せ光を塞ぐ。
瞼を閉じてまず浮かんだのは、今朝見たひまりの笑顔。
ーーやったね!三人一緒のクラス!
バカみたいにはしゃいで、喜んでた。
ほんと、俺の苦労も知らないで。
この一年、邪魔な虫払うのにどんだけ時間費やしたか。
まぁ……結局、強敵は一人も追い払えなかったけどね。
政宗、秀吉先輩、織田先生に明智先生、その上…三成まで増えたし。
(そろそろ、俺も本気で攻めないと)
先手必勝。
春の陽気に誘われ、自然に押し寄せる睡魔。
気づいたら眠りに落ち……
次に気がついたら誰かが近づく、気配がして……
春風に運ばれ、俺の鼻に甘い香りが届いた。
(……どうやって起こすか、ちょっと様子見)
寝たふり続ける俺に、ひしひしと伝わる視線。ただ、静かな沈黙。
(……まぁ、ひまりなら叩いて起こしそうだけど)
やっぱり起きようか悩んでいると……