第74章 「白詰草の花嫁(4)光秀様編」
「何されたって…ちょっと…えっと…」
抱き締められたけど。
多分、私が寒そうだったから?
うん。かな……?
ごにょごにょと口籠ると、家康の眉が一気下がるのが見える。
(まずい!家康の不機嫌、直さないと!)
何をお願いしたかは、内緒にして……。
そう思った私は家康の着ていたパーカーをきゅっと掴み、顔を上に向ける。
「あ、あのね///その、家康の……こと、お願いしてて……///」
恥ずかしくて、少し声が上擦る。
「へ?……俺のこと」
コクコクと頷く。何をお願いしたかは、内緒だけど。と言うと……。
家康はバッと顔を背け、口元を手で隠した。さっきまでの言い合いが嘘のように失くなり、沈黙が流れる。
(もしかして、嫌だったのかな)
勝手に自分の事を、おまじないされて。私は、摘んだままのパーカーを二、三回引っ張った後、不安になって聞いてみる。
「もしかして、嫌だった?」
「……………」
「勝手に、家康のことお願いしたらダメだった?」
「……………」
「家康のこと、私が必死にお祈りしたら……」
「……もう、降参///それ以上、言われたら……俺の心臓止まる」
門から手を離した家康。
やっと私は、自由になる。
チョイチョイ。
「もう、怒ってない?」
「怒ってない。だから、やめて///その服、引っ張んの///」
「なら、顔見せてよ!眉間にシワ寄ってないか確認するから!」
「………無理///」
今度は私が詰め寄る番。
だったけど、
「それ以上、近づいたらキスするよ」
立場逆転の逆転される前に、
慌てて家の中に逃げ込んだ。