第73章 「白詰草の花嫁(3)光秀様編」
窓から景色を静かに眺める。
夜の街灯が光り出した、街。
それを抜けると、今度は薄暗い坂道を車は登り始めた。
(明日は、晴れるかな?)
まだ、薄っすら残る雲の隙間から見えた星空。浮かび上がった新月を見て、
「先生。何か叶えたいお願い事はありますか?」
「何だ、急に?」
「ふふっ。今日、新月みたいだから……」
私はシートに背を預け、小学校の時に流行ったおまじないの話をする。
「新月にしたお願いごとは、満月を迎えた時に成就するって言われてて……」
月の神秘的なパワー。
姿が見えなくなる新月は、月の満ち欠けで始まりを意味してると、昔から言われていると……何かの本で読んだ事がある。
「月が膨んでいくのと同時に、強く願うと効果があるみたいですよ!」
私は小学校の時を思い出し、ついはしゃいでしまう。すると、先生は突然、寄り道すると言って、近くにある小高い丘へと車を走らせた。
「折角だ。何か願うか?」
「はい!何のお願いしようかなぁ?」
私は車から降りて歩道に出ると、木の柵の前で立ち止まる。
下を見ると、小さな街がキラキラと光っていて夜景には絶景の場所。
「うわぁ!雨上がりでも、十分綺麗ですね!」
「芝生が濡れているから、気をつけろ」
明智先生はスッと私の腰に手を添え、足に負担がかからないように支えてくれる。
「先生、今日は優しいですね!」
「日頃から、優しくしてるつもりだ」
「ふふっ。そう言うことにしておきます!」
私は新月を見上げた。
(何をお願いしようかな?)
今度のテストで赤点取りませんように?とか、それだと満月には間に合わないし……。