第72章 「白詰草の花嫁(2)光秀様編」光秀様side
放課後。
保健室のデスクに座り、
夏休みに向け、保健資料を作成する。
熱中症注意の呼びかけ、
遊泳での注意事項、健康チェックなど
決まりのヤツばかり。
(この用が済んだら、茶を点てに行くとするか)
弓道部副顧問など、名ばかり。
本来は茶道部に足を運んでいる。
活動は少ない上、部員も少ない。
静かな所の方が気も落ち着くからな。
俺が副顧問だと知り、姫宮の驚いた顔。あの時は笑いを堪えたが……。
傑作だったなアレは。
思わず笑みを零すと、扉をコンコンと控えめに叩かれた音。
俺は広げた資料を纏め、入るよう促す。
「先生……。失礼します」
周りの人目を気にし、忍ように入ってきた女子生徒。誰も中に居ないことを確認すると、椅子に座った俺に背後から腕を絡ませた。
「先生……。ドキドキして心臓が変なので、診てくれますか?」
「思い当たる節はあるのか?」
「毎晩、先生の夢を見てしまって。身体が疼いて……」
つまらん女だ。
俺はソファに座るように指示をすると、白衣に袖を通す。
わざわざ着用した理由は一つ。
女が喜ぶからな。
「明智先生……ココが熱くて……」
そう言いながら、女は少しの恥じらいもなく、ボタンを外していく。
ソファに足を上げ、熱の含んだ瞳を俺に向け胸元を広げた。
「先生しか治せない……」
腕を伸ばし俺に絡みつくと。耳元でわざと吐息を零し、戯れごとをする前から身体を赤く染め……。
(何故だ。……気分がやけに乗らんな)
ギシッ……。
(……その内、何とかなるだろ)
そう思い、女の身体をソファの上に沈ませ覆い被さった時だ。
バンッ!
勢い良く開いた扉。
視線だけ向ければ、
「先生!包帯がとれ……て……」
(……ノックぐらい出来ないのか)
流石に鈍くても状況がわかったのか、姫宮は放心状態で暫く凝視した後、
「し、失礼しました!///」
律儀に頭を下げ、出て行く。
「クッ……。面白いヤツだ」
「え?先生……?」
俺はソファから降りると、スタスタと再びデスクに戻り仕事を再開する。