第70章 風待ち月(19)
(五百年前の物だよね?これ?)
さっき解説を読んだ私は、思わず眉を顰めた。全く歴史を感じさせない綺麗な羽衣。ほつれも綻びも見る限り、一つもない。
ゆっちゃんと同じ様に制服の上から纏い、ゆっくり鏡の方に振り返る。
(う〜〜ん……)
何の変化もない。
鏡の中の私。
いつもの見慣れた自分の姿。
(ふふっ。まぁ、河童姿とかが映るよりはいいよね?)
鏡の中の自分にそっと触れたまま、後ろにいる三人の方に身体を向け……
「良かった!私も河童ではないみたいだよ?」
笑いながらそう言った瞬間、三人は何故か同時に目を見開く。
「??どうしたの?」
「おまっ……」
「せ、先輩っ」
「っ!!」
まるでお化けを見たみたいに、三人は絶句。三成君に指をさされ、もう一度鏡の方を見るけど、さっきと変わらず私の姿が映ってるだけ。
「ひまり〜〜!おみくじしよう!」
「あ、うん!ちょっと待って!」
お手洗いから戻って来たゆっちゃんに呼ばれ、綺麗に羽衣を畳むとガラスのケースに戻す。
まだ目を開けたまま、
呆然と立ち尽くした三人。
どうしたんだろう?
軽く声を掛けてから、私はゆっちゃんの元にゆっくりと歩く。
「今の見たか?」
「見ましたよ」
「…………」
ひまりが振り返った一瞬。
鏡の中に、着物姿の女が映った。
髪はひまりよりも長かったが、
顔は瓜二つだった。
「幽霊じゃねえよな?」
「昼間から、冗談言わないで下さい」
「……まぁ。本人は見えてなかったみたいだし」
気のせいって事にしとく。
家康は少し口元を綻ばせ、足を庇いながら歩くひまりをお姫様抱っこする。
「きゃぁ!!」
「今度は俺の番。恋みくじ引くんでしょ?」
「も〜〜っ///降ろしてよ〜///」
野外活動はこうして終了した。
と、思ったら。