第70章 風待ち月(19)
「やぁ!偶然だね!」
「あっ!佐助君!?」
私を横抱きしようとする、
皆んなから逃げて来た矢先。
森の中から現れた佐助君。
凄い偶然なのに、
だんだん免疫が付いてきたみたい。
前みたいに腰を抜かすぐらい、
驚くことが無くなりつつあった。
「まさか、此処で君に逢うとは。今回は俺の方が、正直驚いたよ」
「全然、そんな風に見えないよ?」
至っていつも通りの佐助君。
眼鏡をクイッと掛け直し、先月に渡した和歌集は役立ったかと尋ねられ……。
「うん、和歌を調べるのに使わせて貰ったよ!でも、私にピッタリなのは探せなくて……」
あの時は家康のことが気になって、それ所じゃなかったから。
「ねえ、佐助君。私を選んでくれた人と違う人をもし、私が選んだらどうなるの?」
そう何気なく聞いてみた。
すると、佐助君は物凄い速さで私の手を握りしめ、キランッ!と眼鏡が光って……
「まさに、いい傾向だ!うん!うん!後、一歩という所まで来ている!!」
「な、何のこと!?」
「さぁ!今月は六月だ!女性が憧れるJune brideだよ!!」
パッ!と手を離し、
また、キャラがいきなり変わる佐助君。まるでドレスを纏ったように、裾をつまむ真似をして、一人でに踊り出した。
そしてくるくると回りながら一輪。白詰草を摘むと私の手の平に乗せ……。
「花言葉は『私を思って』『約束』らしい!素敵なプロポーズが君を待っている!!」
「ちょと待って!プ、プロポーズって!私まだ誰とも恋人同士になってないのに!」
佐助君は忍者ポーズをして、目を閉じる。そして恐らく来月は違うアドバイスになるからと言って……。
突然、吹いた風。
手の平に乗ったが白い花が飛んでいきそうになり、慌てて掴む。
そして気がついたら、佐助君は何時もながら消えていた。
(とりあえず、帰ったら水瓶に入れて窓辺に飾っておこうかな?)
プロポーズ?
流石にちょっと、あり得ないかな?
私は、ポケットからさっき引いた恋みくじを取り出す。
『大吉』
白詰草をおみくじに巻いて、皆んなの所に戻った。