第67章 風待ち月(16)
織田先生は、
奥にあるダイニングテーブルに、
私達を向かい合わせに座らせ、一言。
何があったか説明しろと……。
築城さんはただ俯いて、
小刻みに肩を震わせていた。
帰りに見た工事用の看板。
私がちゃんとあれを見ていたら、
こんな事にはならなかった。
懐中電灯を持って行くように進めてくれたのは、築城さん。
ダンスの件が家康の言うとおり嘘なら、多分……。
(きっと、その間だけ私に……)
一向に口を開かない私達。
織田先生は何も言わず、ただ手を組み静かに見守ってくれている。
緊張感を解くように私は軽く息を吐き、
「ヒメボタルが観たくて、私が勝手に一人で山に入りました」
「ひまり!何で!」
後ろから家康に呼ばれても、私は気にせず話し続ける。
築城さんは、危ないからと懐中電灯を持って行くように進めてくれたのに、うっかり付け忘れ。工事用看板に気付かず、迷子になったと。
「勝手な行動をした罰は、受けます」
皆んなが本当の事情を、
知ってるからこそ。あえて嘘を吐いた。
「嫌がらせを受けていたと、聞いたが?」
「受けていません」
「ど、どうしてよ!庇ってなんか……っ!」
築城さんのした事は、確かに許せることじゃない。私の友達が同じ目に遭ったら、きっと許すことなんて出来ない。
でも、少しだけ築城さんの気持ちがわかったから。
家康がダンスに
誘ったって聞いた時……。
キャンプファイヤーが
中止になった時……。
私は……。
築城さんが部屋から出て行く前、
「私も中学、バスケ部だったの。だから、今度のクラスマッチ!よろしくね!」
差し出した手。
握り返しては貰えなかったけど、
「……悪かったわ」
今度のは、お芝居じゃない気がした。
コテージに戻っている時。
「……お人好し」
「……別に、そんなんじゃないよ」
私だって、
本当に好きな人が出来たら、
案外、すっごいヤキモチ妬きかもよ?
冗談っぽく笑ってみせる。
すると、家康は急に立ち止まり……。
???
顔を上げると、
「ひまりなら、大歓迎」
ドキッ……。
(家康が真っ直ぐ見れない)
目元を赤く染め、
意地悪そうに笑う家康に、
胸が大きく跳ねた。