第67章 風待ち月(16)
___職員用コテージ。
とりあえず、着替えが先だと織田先生に言われシャワーを浴びた。
髪を乾かし、お風呂場から出ると……。
明智先生にソファに腰掛けるように言われ、大人しく座る。すると先生は私の脚を自分の膝の上に乗せ、湿布と包帯で丁寧に手当てしてくれた。
「応急処置はしたようだな」
「家康がしてくれて。まだ、腫れてますか?」
「まぁな。暫くは、俺が車で送迎してやる」
「そんな……っ!私なら大丈夫です!」
歩けないほど痛みじゃない。
駅まではバスに乗るからと、私は遠慮する。けど、明智先生は細く笑みを浮かべ、弓道部の副顧問だから気にするなと……衝撃発言。
「えっ!!先生!副顧問なんですか!」
思わず、転げ落ちそうな声を上げた私。
「知らなかったのか?」
「だ、だって一度も……!嘘!」
「俺は基本、裏方だからな」
今の今まで知らなかった。
私がぽかーんと放心状態でいると、扉を誰かがノックする音。
部屋に入ってきたのは、家康。
「次の患者だ。家康、お前も座れ」
「え!?家康も怪我したの!!」
私は隣に座った家康の方に身体を向ける。赤く染まった利き腕の手首。
(まさか、私を助けた時に……っ)
大した怪我じゃない。
家康はそう言って、涙が浮かびかけた私の頬を抓る。
「でも!利き腕なんて!来月には大会だってあるのに!!」
家康は弓道部のエース。
秋季大会の出場権がかかった、大事な予選の大会。個人戦、団体戦、男女混合戦……全部の出場選手なのに。
「あのね。俺の心配より自分の心配して」
家康は包帯で巻かれた私の脚を指差す。明智先生にも、その通りだと言われてしまい。
それでもザックリと切り開いた傷口を見た瞬間、
「縫うか縫わないか、判断しにくい傷だな」
「……一晩様子を見ます。それより、ひまり。いつまで、泣いてんの?」
「だっ……て。私のせいで」
「なら、その捻挫。俺のせい」
違う!私がそう言って顔を上げると、家康は軽く息を吐き……俺もおんなじ気持ちだから。
私の頬に伝った涙を指で下から掬い横に弾くと、辛そうに笑う。
「……失礼します」
一瞬誰かわからなかった。
築城さんから出た声が、あまりにも弱々しくて。