第294章 〜ending〜卒業式〜
でもまたすぐにひまりは表情を変えると……ゆっくりと俺に顔を近づけた。
「……もう、誰とも間違えないでね」
吸い込まれそうな瞳。
その瞳の中に薄っすら悲しみの色を見つけて、俺は堪らず強く抱きしめると、絶対に間違えないと誓う。
「なら、指切り!」
「指切り?もう高校生でもなくなるのに?」
「いいの!ほら……小指立てて!」
小指同士を絡ませるとひまりは小さい頃みたいに、「指切りげんまん……」と歌い始めた。
「針千本のーますっ!」
「……何?指は切らないの?」
「ふふっ。切らないの……その代わり……」
薄っすら閉じた瞳。
ドキッと胸が一つ鳴る。
ひまりの顔が近づいてきて、ゆっくりと唇が重なった。
「っ!!///」
不意打ちされた俺は咄嗟に口元を抑える。
「自分からって恥ずかしいねっ///」
そう言って恥ずかしそうに俯くひまり。バクバクいっていた胸をなんとか俺は落ちつかせると……
「……もう一回して」
「えっ?……きやぁ!」
そのまま二人で芝生の上に倒れこむ。俺はそっと三つ葉のヘアピンを指でなぞり、「早く……」急かすようにそう言って意地悪そうに笑うと、ひまりは困ったように視線を泳がす。
「……ぶっ!俺のお姫様は、ほんとコロコロ表情が変わって面白い」
「もうっ!どうせ百面相ですよーだ!」
でも……
「そんな所がやばいくらい……可愛い」
結局二回目のキスは俺が我慢できなくて……奪うように唇を重ねた。
何度も何度も。
「い……え……やっ……んんっ」
息継ぎもできないくらいね。
「記念にこのままここで……「何が記念だ?家康?」……へっ!?」
「織田先生!!皆んなっ!!」
どうやらこの先はお預けらしい。
はぁー……俺は慌てて起き上がるひまりの隣で盛大な溜息を吐いた。