第294章 〜ending〜卒業式〜
教室に一人戻り……
皆んなと他愛のない会話で笑ったこと。お昼を食べたこと、恋話したり、イベント時は盛り上がって……先生に授業中、注意されたこともあった。
(楽しかったな……)
今でも鮮明に思い出せそうな程、どれも今となってはかけがえのない思い出。
ピカピカにワックスがかけられた廊下に出て、二年生の四月、新学期に家康を探し回っていた時のことを思い出す。
(また、探さなくちゃいけない?)
一人クスクス笑いながら、私は歩き出す。
保健室に行って、図書室に行って、職員室に行って……
でも、家康どころか校舎には誰もいない。
(どこに行ったんだろう?)
もしかして外に先に行ったのかな?
私は昇降口に移動して……
ふと目がいった下駄箱を見つめる。
新学期、
ここから始まった私達の物語。
無意識に手が伸びて、私は下駄箱を開ける。するとそこには見覚えのある一通のシンプルな便箋が入っていた。
宛名は戦国姫へじゃなくて、
現代姫へ
『貴方はある戦国武将の姫君です。思い出の場所でお待ちしております』
その文面を読んでまたクスクス笑う。差出人不明の手紙。でも、私には誰かすぐにわかり、急いで思い出の場所に向かう。
手紙を握りしめ、辿り着いた裏庭。
青々とした芝生。
春を運んでくる暖かな風をお腹いっぱいに吸い込んで……
石碑の前で、
顔の上に本を置いて寝そべる一人に近づく。
また、狸寝入りしてるのかな?
足音を消して忍び足。
今度こそびっくりさせたくて……
そっと近寄ってその場にしゃがみこむ。